井戸ポンプが止まった!? まず確認すべき５項目

井戸ポンプは日々の生活や事業に欠かせない設備ですが、突然のトラブルに見舞われると困ってしまいますよね。水が出ない、水圧が弱い、変な音がする…といった症状は、井戸ポンプの故障が原因かもしれません。しかし、慌てる必要はありません。多くの場合、適切な知識があれば、原因を特定し、ご自身で対処できることもあります。

この記事では、井戸ポンプに発生しやすい代表的な故障・不具合の症状を網羅し、その原因と具体的なセルフチェック、対処法をプロの視点から分かりやすく解説します。また、ご自身での対処が難しい場合の専門業者への相談タイミングや、修理・交換の目安、費用相場についてもご紹介。正しい知識を身につけ、安心して井戸ポンプを使い続けましょう。

症状別トラブル図鑑《10パターン》

井戸ポンプのトラブルは多岐にわたりますが、症状を正しく把握することが解決への第一歩です。ここでは、よくある10の症状とその考えられる原因をご紹介します。

水が出ない／吸い上げない

最も一般的なトラブルの一つです。原因はいくつか考えられます。

吸上高さの限界を超えている
深井戸用ホームポンプのTHPC形は吸上高さ20m以内、浅井戸用ホームポンプのTHP形は吸上高さ8m以内で使用可能です。これを超える深さからの揚水はできません。

空運転によるポンプの損傷
井戸の水位低下などによりポンプが水を吸い上げられず、空運転（水が出ない状態での運転）を続けると、ケーシングや軸受、軸封などが破損し、揚水不能になる恐れがあります。空運転は過熱による火災の原因にもなります。

ストレーナの詰まり
TWS深井戸用水中ポンプユニットシリーズでは、減圧弁に組み込まれたストレーナが異物で詰まると、性能が低下する場合があります。砂の多い井戸では、砂こし器（ストレーナ）の使用が推奨されます。

羽根車の摩耗・砂詰まり
砂の多い井戸では、羽根車の摩耗や砂詰まりによって吐出量が急減することがあります。水中ポンプの砂による故障（羽根車の摩耗、モーターの拘束、流量スイッチの誤動作など）は、メーカーは責任を負いかねる場合があるため、砂上がりがないよう注意が必要です。

配管内のエア噛み
特に浅井戸ポンプで発生しやすく、吸込側配管からの空気混入や呼び水不足が原因で揚水できません。取扱液中に空気を混入させないでください。

水圧が弱い・脈動する

水は出るものの勢いが弱かったり、間欠的に圧力が変動したりする症状です。

吸上高さが限界に近い
ポンプの吸上高さが限界に近い場合、十分な水圧が得られないことがあります。

ポンプ部品の摩耗
羽根車、ライナリング、中間ブッシュなどのポンプ内部部品の摩耗が激しいと、ポンプ性能が低下し、水圧が弱くなることがあります。

減圧弁の不適切な設定または詰まり
TWS深井戸用水中ポンプユニットシリーズを浅い井戸で使用する場合、地上部の圧力が高くなるため、指定の減圧弁を取り付ける必要があります。減圧弁のストレーナが詰まると性能低下を招きます。

井戸の水位低下
井戸の水位が低下すると、ポンプが十分な水を吸い上げられなくなり、水圧が弱くなることがあります。

ポンプから異音・振動

空運転
空運転は、ケーシング、軸受、軸封の破損につながり、異常音の原因となることがあります。過熱の恐れもあります。
インペラの誤った回転方向
ポンプのインペラが正規の回転方向で運転されていない場合、振動などによりインペラナットやボルトが緩み、事故の原因になることがあります。

ポンプ内部の異物混入・詰まり
砂などの固形物が混入すると、ポンプ内部で異音が発生することがあります。TWSのポンプ主軸の軸受には砂に強いSiC軸受を採用し、摺動部には特殊ゴムを採用しています。FS形自吸渦巻ポンプは、羽根車がセミオープンタイプで砂などの異物に強い構造です。

軸受の劣化
ポンプの軸受（すべり軸受メタルなど）が劣化すると、異音や振動が発生することがあります。

モーターが過熱・ブレーカーが落ちる

過負荷運転
ポンプが定格以上の負荷で運転されると、モーターが過熱し、地上ユニットのサーマルリレーやモーター内部のサーマルプロテクタが作動して運転を停止させることがあります。

空運転
空運転はポンプの過熱を引き起こし、火災の原因になることがあります。

不適切な電圧の使用
定格電圧以外での使用は、火災や感電の原因になります。単相100Vポンプは95V～110V、三相200Vポンプは190V～220Vの範囲で運転されているか確認し、各相の電圧不平衡は±5V以内であることを確認してください。

配線工事の不備
誤った配線工事は、感電や火災の原因となることがあります。配線工事は電気工事士が行う必要があります。

サビ水・濁り水が出る

井戸水質の変化
井戸水のpH（5.8～8.6）、塩素イオン（200mg/L以下）、固形物・濃度（50mg/L以下、固形物・径0.3mm以下）の基準から外れると、ポンプや配管の腐食が進みやすくなることがあります。

ポンプや配管の腐食
ポンプや配管内部が錆びると、サビ水が出ることがあります。ナイロンコーティングを施したポンプ（GEN-2M形、GEN-4M形）やステンレス製ポンプ（PSS(2)形、GES-C形、GES-2M形、GES-4M形）は、赤水防止や耐食性に優れています。

砂の混入
井戸からの砂の混入（含有砂量50mg/L以下、大きさ0.1～0.25mm）も濁り水の原因となります。

除鉄・除マンガン処理の必要性
井戸水に鉄分やマンガン分が多く含まれる場合、除鉄・除マンガンろ過装置の設置が有効です。ただし、この装置は水を飲料可能にするものではなく、飲用にする場合は保健所への相談が必要です。

空運転アラームが止まらない

井戸の水位低下
ポンプが水を吸い上げられず、井戸の水位が低下した場合に空運転防止機能が作動します。TWSシリーズには液面リレーによる空運転防止機能（オプション）があります。

フロースイッチの誤動作
フロースイッチ支持棒が外れていると、誤動作を起こし、空運転アラームが止まらないことがあります。

自動運転しない・停止しない

蛇口の開閉とポンプの連動不良
THPC形とTHP形は、蛇口の開閉に連動して自動的に運転を起動・停止する自動運転式です。この機能に不具合が生じると、自動運転しなかったり、停止しなかったりします。

圧力スイッチ、フロースイッチの不具合
TWSシリーズは流量スイッチと圧力スイッチによる定圧給水方式を採用しており、これらのスイッチの不具合が自動運転の不調につながることがあります。

電源電圧の不安定さ
TWSシリーズでは、携帯発電機を電源として使用すると、「蛇口を閉じてもモーターが止まらない」などの誤動作の原因となることがあります。

冬場の凍結トラブル

自動保温装置の有無や効果不足
THPC形とTHP形には凍結を防ぐ自動保温装置が付いていますが、特に寒い地域や長期間運転しない場合は、これだけでは不十分なことがあります。

適切な凍結防止対策の不足
寒冷地で長時間運転しない場合でも、電源を切らないことが推奨されます。やむを得ず電源を切る場合は、圧力タンクや吸込口継手の水を抜き、蛇口を開けた状態、呼び水口キャップを外した状態にしてください。

ポンプ用ヒーター
一部のポンプではポンプ用ヒーターが別売部品として提供されており、サーモスタットが標準付属します。TWSシリーズにもヒーターによる凍結防止機能があります。

電気代が急増した

ポンプ効率の低下
ポンプ内部の部品（羽根車、ライナリングなど）の摩耗が激しい場合、効率が低下し、同じ水量を揚水するためにより多くの電力を消費することがあります。

異臭・ヌメリが取れない

井戸水質の悪化
井戸水の水質基準（pH、塩素含有量、含有砂量など）を満たしていても、細菌や藻類の発生、あるいは特定の化学物質の混入によって、異臭やヌメリが発生することがあります。

塩素除菌の必要性
井戸水の塩素除菌を確実に行うために、流量比例塩素除菌装置があります。これはポンプの運転と連動し、流量に比例して薬液を自動調整して注入します。

原因別に見る！迅速なセルフ診断フローチャート

井戸ポンプのトラブルが発生した場合、以下のフローチャートに沿ってセルフチェックを行うことで、原因を絞り込み、適切な対処法を見つけることができます。

対処法ガイド

ここでは、ご自身でできる対処法と、その難易度の目安をご紹介します。

対処法	難易度	補足
電源・ブレーカー確認	簡単	まず最初に確認すべき項目。
サーマルリレーのリセット	簡単	ポンプが過負荷で停止した場合、5分以上待ってからリセットボタンを押す。
凍結時の水抜き	中～やや難	圧力タンク・吸込口継手の水を抜き、蛇口を開けた状態、呼び水口キャップを外す。
減圧弁ストレーナ清掃	中	電源を切り、ドレン栓を緩めてストレーナを取り出し水洗い。
呼び水の補充・エア抜き	中	エア噛みが原因の場合に有効。取扱説明書を参照。
フロースイッチ支持棒の確認	中～やや難	再組立時に外れていないか確認する。
ポンプ用ヒーターの使用	簡単	凍結防止対策として検討。
砂こし器の設置・清掃	中～やや難	砂の多い井戸からの揚水の場合、羽根車摩耗や詰まりを軽減。
除鉄・除マンガンろ過装置	専門業者依頼	井戸水の水質改善のため。飲用には保健所への確認が必要。
流量比例塩素除菌装置	専門業者依頼	井戸水の衛生対策のため。

Oリング交換／フート弁清掃／インペラ詰まり除去／エア噛み解消

Oリング交換
パッキンやOリングの劣化は水漏れや吸込不良の原因となります。定期的な点検で状態が悪い場合は交換が必要です。

フート弁清掃
浅井戸ポンプなどで使用されるフート弁が汚れていたり、詰まっていたりすると、吸い上げが悪くなります。フート弁はポンプの底部にあるため、引き上げて清掃する必要があります。自吸式ポンプのFS形はフート弁不要で揚水が簡単です。

インペラ詰まり除去
ポンプの羽根車（インペラ）に異物が絡まったり、詰まったりすると、揚水能力が低下します。分解して異物を取り除く必要がありますが、専門知識が必要な場合が多いです。FS形はセミオープンタイプの羽根車で異物に強い構造です。

エア噛み解消
呼び水不足や吸込配管の接続不良が原因でポンプ内に空気が残ると、水が吸い上げられません。ポンプ上部の呼び水栓から水を補充し、ポンプを数回ON/OFFして空気を排出します。

プロに頼むべきケースと費用相場

上記セルフチェックや簡易対処法で解決しない場合、または以下のような症状が見られる場合は、専門業者に依頼することをおすすめします。

• 頻繁にブレーカーが落ちる／モーターが過熱する
  根本的な原因究明と修理が必要です。
• ポンプから異音・振動が改善しない
  インペラの回転方向の確認や、軸受の摩耗、内部部品の損傷が考えられます。
• サビ水・濁り水が続く、異臭がひどい
  水質の根本的な改善やろ過装置、除菌装置の設置などが必要となるため、専門的な診断と対策が必要です。
• 長期間の使用による経年劣化
  圧力タンク、圧力スイッチ、フロースイッチなどの消耗部品は3年が交換目安とされています。羽根車やケーシングなども磨耗や性能低下が見られる場合は交換が必要です。
• 取扱説明書にない異常な状態
  予期せぬトラブルはプロの診断が不可欠です。

修理料金表（部品交換）具体的な修理費用は、部品の種類、ポンプの型式、作業内容によって大きく異なります。以下の要素で費用が変動します。

部品代：数千円から数万円。

技術料：作業時間や難易度による。

出張費：地域や業者による。

新品交換の目安 ポンプの寿命は使用環境やメンテナンス状況によりますが、一般的に10年～15年と言われています。修理費用が高額になる場合や、頻繁にトラブルが発生する場合は、新品への交換も検討しましょう。最新モデルは省エネ性能が向上していることもあります。

補助金・ローン情報 井戸ポンプの交換や新規設置に際して、自治体によっては補助金制度を設けている場合があります。お住まいの地域の自治体窓口に問い合わせてみましょう。

予防メンテナンス７カ条＆おすすめ工具

トラブルを未然に防ぎ、ポンプを長持ちさせるための予防メンテナンスが重要です。

定期的な運転
長期間使用しない場合でも、月に1回程度は定期的に運転してください。これにより、部品の固着や劣化を防ぎます。

定期的な点検
月に1回程度、絶縁抵抗、運転電流、振動、吐出量などを点検することをおすすめします。

水抜き・凍結防止対策
冬季に長期間使用しない場合や、特に寒冷地では、ポンプ本体の自動保温装置だけでなく、水抜きや追加の凍結防止対策を行いましょう。

ストレーナの清掃
減圧弁に組み込まれたストレーナは、設置初期とその後1ヶ月に1回程度の点検・清掃が必要です。

水質管理
井戸水の水質（pH、塩素イオン、含有砂量）が許容範囲内であることを確認し、必要に応じてろ過装置や除菌装置の導入を検討します。

適切な電源・配線
定格電圧での使用を厳守し、配線工事は必ず電気工事士などの専門業者に依頼してください。アース工事も法律で義務付けられています。

空運転の回避
井戸の水位低下には特に注意し、空運転を避けてください。水位低下保護機能付きのポンプも検討しましょう。

おすすめ工具（DIY可能な範囲で）
モンキーレンチ、パイプレンチ
配管の接続部の締め付けや緩めに。

ドライバーセット
カバーの開閉や簡単な部品交換に。

バケツ、雑巾
水抜きや清掃時に必要。

テスター（電圧計、抵抗計）
電圧や絶縁抵抗の簡易測定に。

よくある質問10選

Q：井戸ポンプが動かないのですが、まず何をチェックすればいいですか？
A: まずは電源が入っているか、ブレーカーが落ちていないかを確認してください。次に、ポンプから異音がないか、空運転していないかを確認します。

Q：冬場、井戸ポンプの凍結が心配です。どうすればいいですか？
A：多くのポンプには自動保温装置が内蔵されていますが、寒冷地では電源を切らずに通電状態を保つことが推奨されます。やむを得ず電源を切る場合は、ポンプや配管の水を抜く作業が必要です。

Q：井戸からサビ水が出てきます。ポンプの故障ですか？
A：ポンプや配管の腐食、または井戸水中の鉄分・マンガン分が原因の可能性があります。ステンレス製ポンプへの交換や、除鉄・除マンガンろ過装置の導入を検討してください。

Q: ポンプから変な音がします。そのまま使い続けても大丈夫ですか？
A: 異音はポンプ内部の異常を示すサインです。空運転、異物混入、または部品の摩耗が原因で、放置すると大きな故障につながることがあります。早めに点検してください。

Q：井戸ポンプの寿命はどのくらいですか？
A：ポンプの寿命は使用環境やメンテナンス状況に大きく左右されます。消耗部品は3年程度での交換が目安とされています。異常があればメーカーや専門業者に相談してください。

Q：井戸水が臭う場合、どうすればいいですか？
A：水質に問題がある可能性があります。水質検査を行い、必要であれば流量比例塩素除菌装置の導入を検討してください。飲用を考えている場合は、保健所に相談が必要です。

Q：浅井戸ポンプと深井戸ポンプの違いは何ですか？
A：主な違いは吸上高さです。浅井戸用ポンプは吸上高さ8m以内、深井戸用ポンプは20m以内（THPC形）またはさらに深い井戸に対応する水中ポンプ（TWS形はポンプ水没許容深さ70m、3.7kWは210m）で使用されます。

Q：ポンプを修理するか、交換するか迷っています。判断基準はありますか？
A：ポンプの年式、修理費用、頻発する故障の有無が判断基準となります。修理費用が高額になる場合や、頻繁にトラブルが発生する場合は、新品への交換を検討しましょう。

Q：DIYで修理できますか？
A：簡単な点検や水抜き、ストレーナ清掃などはDIY可能ですが、電気工事やポンプ内部の分解を伴う修理は、感電や火災のリスクがあるため、必ず専門の電気工事士や販売店に依頼してください。

Q：ポンプの設置場所で注意することはありますか？
A：TWS深井戸用水中ポンプユニットの場合、地上ユニットに水をかけないでください。また、水中ポンプは水中で使用するため、電源ケーブルを引っ張らないでください。

まとめ＆今すぐできるアクション

井戸ポンプのトラブルは、日々の生活に大きな影響を与えます。しかし、症状を正しく理解し、適切な初期対応を行うことで、多くの場合、ご自身で解決の糸口を見つけることができます。

今すぐできるアクション
このガイドの「セルフ診断フローチャート」をもう一度確認し、可能な範囲で原因を特定しましょう。
「対処法ガイド」を参照し、ご自身で実施可能な対策があれば試してみましょう。
安全に十分注意し、特に電気関係の作業は専門家以外は絶対に行わないでください。
もし、ご自身での対処が難しい場合や、症状が改善しない場合は、迷わずプロの専門業者に相談しましょう。無理なDIYは状況を悪化させ、かえって高額な修理費用や危険を招く可能性があります。